37分前
ストラテジー、簿価を下回るビットコイン1,690BTCを売却 優先株買い戻し資金に
米上場ソフトウェア企業のStrategy(旧MicroStrategy)は、保有ビットコインを取得原価(コストベース)を下回る水準で売却した。売却は2週連続で、今回は1,690BTCを約1億860万米ドルで処分。資金は優先株の買い戻しに充当した。一方で株式発行による資金流入により、米ドル準備金は46.5億米ドルまで積み増された。
同社はバランスシート上でビットコインが最大の資産で、株式・社債の発行で購入資金を調達する「ビットコイン・トレジャリー企業」の代表例とみられてきた。マイケル・セイラー執行会長の下、2020年以降は継続的な買い増しと「売らない」方針が象徴的だったが、2026年6月末に公表した「Digital Credit Capital Framework」により、資本構成の運営目的で計画的な売却を可能にした。今回の取引は、その枠組みに基づく2週連続の売却となる。
売却後の保有残高は840,447BTCで、時価は約547億米ドル。平均取得単価は1BTCあたり75,385米ドルとしている。
■8-Kで開示、売却価格は平均64,262ドル
同社は米証券取引委員会(SEC)へのForm 8-K提出で取引を開示した。売却期間は8月3日から9日で、提出は翌日に行われた。平均売却価格は1BTCあたり64,262米ドル。
前週(8月2日までの週)にも1,638BTCを約1億500万米ドルで売却しており、こちらも同じ枠組みの下で実施された。
今回のビットコイン売却による手取りは、STRC優先株1,152,020株の買い戻しに全額充当された。STRCはStrategyの優先証券で、年率12%の配当が付く。普通株の希薄化を抑えつつ資金調達できる一方、ビットコイン価格に関係なく固定の支払い負担が発生する。買い戻しは将来の配当負担を軽減する狙いがある。
■資金の主役は株式発行、準備金は46.5億ドルへ
当該週の資金源としてはビットコイン売却が最大ではなかった。Strategyは同時期に、アット・ザ・マーケット(ATM)プログラムでMSTR普通株6,585,682株を発行し、6億5,310万米ドルを調達。株式発行による資金はビットコイン売却の約6倍に相当する。
同社はこの資金から準備金を6億5,000万米ドル積み増し、46.5億米ドルとした。社内ルール上、この準備金は優先配当と利払いのカバーに限定され、新規のビットコイン購入のための資本バッファーには充てないという。なお、株式などでの追加発行余力は約220億米ドル分が未使用としている。
■簿価割れ売却で「ネバーセル」から転換
平均売却価格64,262米ドルは、平均取得単価75,385米ドルを約14.8%下回る。売却した1BTCあたりの概算損失は約11,123米ドルとなり、資本構成上の支払い(配当・買い戻し)を賄うために、取得価格を下回って放出した格好だ。
保有全体でも含み損は拡大している。手数料込みの取得総額は約634億米ドルに対し、現在価値は約547億米ドルで、評価損は約87億米ドル。ただしこれは未実現損失である。
6月の枠組みは、STRC配当を12%に引き上げ、各10億米ドルの2つの買い戻しプログラムを設定。さらにビットコイン売却を初めて最大12.5億米ドルまで認めた。8月上旬にはこの「BTC Monetization Program」を最大50億米ドルへ拡大している。この枠内には準備金向け約12.5億米ドルも含まれる。配当・利息の年間負担は約17.6億米ドル、普通株・優先株の買い戻しに最大20億米ドルを充当できる設計。期限はなく、売却量の固定義務もないため、保有資産の「収益化」が恒常的な選択肢として組み込まれた。
セイラー氏はXで、個人の姿勢と企業の会計・財務運営は別だと説明している。前週の1,638BTC売却後の批判に対し、「"ビットコインは売るな"と言う時、私は貯蓄者として別の貯蓄者に話している。私は自分の分を一度も売っていない。1サトシもだ。Strategyは上場企業で、私の財布ではない」と投稿した。
直近2週間で同社の売却は合計3,328BTC、受け取りは約2億1,400万米ドル。目的はいずれも配当と買い戻しの社内資金手当てにある。
■STRCは額面回帰へ、株価反応は限定的
買い戻しはSTRC価格にも表れている。STRCは2026年6月末時点で75米ドルを下回っていたが、足元は95米ドル超まで回復。額面100米ドルまで5米ドル未満に迫った。額面は配当計算の基準でもあり、同社は価格を額面近辺へ誘導する意向を示している。
開示直後の市場反応は小さく、MSTR株は寄り前で約0.2%高。ビットコイン価格は横ばいだった。MSTR株は前週に3.3%上昇し、金曜終値は100.01米ドル。ビットコインも同期間に2.4%上昇した。
一方、長期ではなお差がある。MSTR株は過去最高値から約78%低い水準にある。同社は企業価値を保有ビットコイン価値で割る独自指標「enterprise mNAV」を1.07と公表。1を上回る場合は保有資産にプレミアムが付いていることを示すが、1.07では市場がビットコイン保有にほとんど上乗せ評価していないことになる。標準化された会計指標ではない点に留意が必要だ。
■保有規模は依然最大、上場企業のモデルは転機
売却後も同社は最大のビットコイン保有企業であり続ける。840,447BTCは発行上限2,100万BTCの約4%に相当する。次点はTether支援のTwenty One Capitalで43,514BTC(Strategyの約5%強)。続いてMetaplanetが43,000BTC、MARAが35,377BTC。5位はAdam Back氏とCantor Fitzgeraldが支援するBitcoin Standard Treasury Companyで30,021BTC。これら4社の合計でもStrategyの保有量の2割に満たない。
Bitcoin Treasuriesのデータによれば、ビットコイン取得モデルを採用した上場企業は196社に達する一方、評価倍率は低下している。デジタル資産トレジャリー企業では、時価総額を純資産価値(NAV)で割った倍率が2025年夏の高水準から大きく縮小した。
モデルは株式市場での増資に依存するが、配当や利息の負担は株価に関係なく発生する。株価が保有コイン価値にわずかに上回る程度まで下がると、新株発行による1株当たりビットコイン積み増し効果が乏しくなり、資金調達が魅力を失う。結果として、保有資産の売却が社内資金手当てとして前面に出やすい。
Strategyは、株式市場での約220億米ドルの調達余力と、最大50億米ドルの売却プログラムの両方を維持する。かつて積み上げに使われたスタックが、資本構成を支える原資としての色合いを強めている。